現場で体を張って働いてきた人ほど、年齢とともに体力の衰えを感じたとき、「もう現場は無理かもしれない」と考えがちです。特に足場の仕事は、高所作業や重量物の取り扱いなど、どうしても体力勝負のイメージが強く、「引退」を意識してしまう方も少なくありません。
しかし実際には、年齢を重ねたからといって即座に現場を離れる必要はないという考え方が、業界内でも広まりつつあります。むしろ、経験豊富な職人こそが現場の安全性や効率性を支える重要な存在であり、チームの要とされることも増えてきました。
「体力だけで評価される時代」は終わりつつあります。年齢に応じた役割の変化こそあれ、築いてきた知識と信頼が活きる場面は、これから先も確実に存在しています。
現場を支える、ベテランの新たな役割とは
足場職の仕事は、単なる作業にとどまりません。現場全体の流れを見渡し、安全を確保し、若手を導く――そうした目には見えにくい「仕事」が、実は非常に重要です。特に年齢を重ねた職人が担う役割として増えているのが、以下のようなポジションです。
まず、「職長」や「リーダー」としての役割。作業自体は若手が中心となって行うものの、現場の配置や段取りを組み立てるのは、経験のあるベテランの力が必要です。何を、どの順で、どうやって設置するか。それを的確に判断できる人がいるかどうかで、現場の安全と効率は大きく変わってきます。
次に、「安全管理」や「教育係」としての立場も重要です。新人が増える現場では、安全意識の醸成や基本作業の指導が欠かせません。その役割を担うのは、やはり現場を知り尽くした先輩たちです。自ら体を動かすのではなく、後進を育てることで現場を支えるスタイルが、今では定着しつつあります。
このように、体力に頼る働き方から、頭と経験を活かす働き方へ。それが、年齢を重ねた職人に求められる新しいスタイルです。
働き方を見直す、という選択肢
足場業界では今、「年齢に応じた働き方の最適化」が一つのテーマになっています。現場に立ち続けることだけが選択肢ではありません。たとえば、以下のような働き方が広がり始めています。
一つは、「軽作業中心の現場」への配置転換です。ビルの大規模現場ではなく、比較的作業負担の少ない住宅現場や、地上での資材管理を担当するような配置もあります。体への負担を抑えながら、現場の一員として活躍できる形です。
もう一つは、「業務を限定する働き方」です。たとえば、週3日だけ勤務する、半日勤務に切り替えるといった柔軟なシフトが認められるケースもあります。完全に現場を離れるのではなく、無理のない形で仕事を続けるという考え方が、徐々に浸透しつつあります。
加えて、「社内講師」や「技能検定支援」など、現場を離れても知識を活かせるポジションに就く人もいます。これは単なる“退職後の道”ではなく、現役の延長線上にある「キャリアの再設計」として、現実味を帯びてきています。
「職人引退後」ではなく「役割転換後」としてのキャリア
足場の仕事において、年齢を重ねた人材の存在は「過去の遺産」ではなく、むしろ現場の現在と未来を支える土台といえます。実際に、多くの現場ではベテラン職人が現場の要となり、若手が彼らの判断や経験を頼りに動いています。
こうした中で、年齢を重ねた職人がキャリアを継続していく上で重要なのは、「体力中心の役割」から「判断と支援の役割」へと自然に移行できる環境が整っているかどうかです。たとえば、材料の発注や現場工程の管理といった、経験があるからこそできる役割は多数あります。さらに、現場に出る頻度を調整しつつ、事務所内での作業や後進の指導といったポジションにシフトすることも一つの方法です。
信頼できる会社では、こうした役割の移行を支えるための仕組みが整ってきています。定期的な面談で今後の働き方を相談できる制度や、本人の希望に応じた配置転換、加齢による体力変化を前提とした安全装備の導入など、無理なく仕事を続けられるための支援が用意されていることもあります。
年齢とともに「やれること」が変わっていくのは当然のことです。その変化をネガティブにとらえるのではなく、「これからどう活かすか」という視点で自分のキャリアを再定義する。そうした意識こそが、足場職人としての“第二のキャリア”を切り開く鍵になります。
足場業界での新しい働き方に興味をお持ちの方は、下記のページから最新の求人情報をご覧いただけます。
https://www.asta-step.com/recruit
経験を重ねた人こそ、現場が求めている
建設業界全体において、55歳以上の職人が占める割合は約40%とも言われています。これは裏を返せば、経験を持った人材がいなければ、現場は立ち行かないという現実を示しています。つまり「年を取ったから辞める」のではなく、「経験があるからこそ必要とされている」というのが、現在の足場業界の本質です。
もちろん、体力に不安を感じ始めたときには、今後の働き方を真剣に考えるタイミングかもしれません。しかしそれは、「辞めるかどうか」を決める場面ではなく、「これからどう働いていくか」を選ぶ機会でもあります。体を動かす現場作業から一歩引いた立ち位置で、新しい役割にチャレンジするという選択肢もあっていいのです。
現場では、年齢を理由に判断を下すのではなく、「この人にどんな役割が合うのか」という視点で配置を考える動きが広がっています。それは、働く側にとっても、職場全体にとっても、より健全で前向きな流れといえるでしょう。
「年を取ったから、そろそろ限界かもしれない」――そう感じるときこそ、自分の可能性を見つめ直す好機です。経験を積み重ねたあなたにしかできない役割が、きっとどこかにあります。
焦らず、無理せず、自分に合った選択を
年齢を重ねた職人にとって、足場の仕事を続けるかどうかは、一人ひとりの体力や生活環境に応じて異なります。「続けるべき」でもなければ「やめるべき」でもありません。大切なのは、「今の自分にとって、どんな働き方が合っているか」を正直に見つめ、それに合った選択ができることです。
最近では、年齢や働き方の悩みについて相談できる企業も増えてきました。必要なのは「やめる決断」ではなく、「相談する勇気」かもしれません。長くこの仕事に向き合ってきたあなただからこそ、新しい役割、新しい働き方を見つけることができるはずです。
もし「もう少しだけ続けたい」「別の形で貢献したい」と感じたら、まずは一度、話をしてみませんか? あなたの経験が必要とされる場所は、きっとまだまだあります。
働き方や将来についてのご相談はこちらからどうぞ。